「無気力」の乗り越え方

みなさんこんにちは!Yutaです(*^^*)


最近、寒くなってきましたね!北陸以外から来られた方にとっては、なかなか適応に苦労する季節になってきたかもしれません。できるだけ日光を浴びるようにしながら、バランスのよい食事を摂るようにしましょう!

さて、今日は「無気力」の乗り越え方について紹介していこうと思います。


1. 無気力に陥る学生たち

私は、大学生活の中で「無気力」に陥ってしまう同級生や後輩をよく見てきました。きっかけは、授業に楽しみを見いだせない、就職がうまくいかないなど様々なのですが、元気に見えた人がある日突然(あるいは徐々に)生気を失ってしまう……ということが不思議なことによくあるのです。

実は私自身も、長く無気力に陥りやすい人生を生きてきました。それは、中学生のころに勉強がうまくいかないようになり、学校を休みがちになったときから始まりました。それまで明るく、やる気に満ちていた私は、突然何をやっても虚ろな世界を生きることになったのです。


2. 立ち直るヒント

こうした状況に陥ったとき、人はどうすれば立ち直ることが出来るのでしょうか。

そのヒントを得るために、うってつけの本があるので紹介しましょう。

それは、マーティン・セリグマンの『オプティミストはなぜ成功するか(原題: Learned optimism)』という本です。この邦題を見ると、自己啓発本の類と誤解されそうですが、セリグマンはアメリカ心理学会(APA)の会長まで勤めた心理学者で、本書の内容も実証的な実験に裏打ちされています(ただ、大変読みやすい語り口であるのは確かです!)


3. 要約

少し長くなりますが、ここで本書の概要を紹介いたします。

セリグマンによると、人は失敗の受け止め方の傾向によって「楽観主義者(Optimist)」と「悲観主義者 (Pessimist)」とに分けられます。

楽観主義者は、失敗を「一時的」で「特定」のものとみなします。例えば「テストの点が悪い」という失敗があったとき、楽観主義者は「今回は勉強時間が少なかったし(一時的)運も悪かった(特定)」と説明します。

その一方で、悲観主義者は失敗を「永続的」で「普遍的」なものとみなします。上の例でいうと、「自分もとから頭が悪いし(永続的)何をやってもだめだ(普遍的)」のように説明するということです。

セリグマンらは、悲観主義者が、「無気力」や「うつ」に陥りやすいことを発見しました。悲観主義者は、失敗を「永続的」で「普遍的」のものだと見なしてしまうために、次もきっと失敗するだろうと考え、無気力を「学習」してしまうのだといいます。

では、どうすればこの状態を抜け出せるのでしょうか。セリグマンは「楽観主義」的な思考を、訓練により習得することだといいます。


4. ABC方式

セリグマンは訓練の方法として、ABC方式を推奨しています。

まず、失敗が心身に影響を及ぼすということは、どのようなことかを考えてみましょう。ある失敗が心身に影響を及ぼすということは、

・人は困った状況(A)に直面すると、その状況に何らかの説明を加える

・その説明の癖は思い込み(B)になる

・思い込みは、気持ちや身体の状態といった結果(C)を生む

の3つの過程に分けることができます。

ここで重要なのは、事実はAとCのみで、Bは受け手の思い込みから生じたものに過ぎない(必ずしも事実ではない)ということです。例えば、先に述べた例で考えてみましょう。「テストの点が悪い」が悪いということは、「困った状況(A)」であり、事実です。しかし、ここで事実に対して2つの説明が可能なのでした。楽観主義者は、その結果が偶然で一過性のものと説明し、悲観主義者は必然でずっと続くと説明します。これは、事実でしょうか。いいえ、そんなはずはありません。第一、事実なら2つの説明が矛盾しますし、失敗の本当の原因など人間に把握することはそもそも不可能です。その意味で、どちらの説明もあくまで思い込み(B)なのです。しかし、その思い込みによって、楽観主義者は次のテストへのやる気を出し、悲観主義者は無気力に陥るという結果(C)が生じるのでした。

思い込みは事実でなく、思考の「癖」です。そして、癖は後天的に(学習によって)変えることができます。事実は変えられませんが、解釈は変えられるのです。

それでは、どうするか。セリグマンは、Bの「思い込み」に対して「反論(D)」と「元気づけ(E)」を行い、楽観的な説明スタイルを身につけることを勧めています。

悲観主義者は「テストの点が悪かった(A)」とき、「やはり自分は頭が悪い。この先も失敗するだろう(B)」という思い込みを抱いており、この思い込みにより「勉強のやる気を失い、他のことも楽しくなくなった(C)」という結果が生じたのでした。

このとき、Aの事実は変えられませんが、Bは変えることができます。上の思い込み(B)に対して、反論(D)と元気づけ(E)を行うのです。例えば、「いや、今回は勉強時間がいつもより短かったし、母も最近仕事疲れでストレスがたまっていたのかもしれない(D)」といった反論や、「今度はしっかり勉強してテストに臨もう(E)」といった元気づけを自分自身に対して行うのです。こうしたことを繰り返すことで、徐々に楽観的な説明スタイルが自分の中に浸透し、無気力に陥ることを防ぐことが出来るのだと、セリグマンは述べています。

もちろん、無気力に陥る人すべてにこのことが当てはまるとは限りません(実際、セリグマンは重度の精神疾患には適応できないことを述べています)。しかし、この方法がある種の「認知行動療法」として、現在も広く心療内科や精神科で用いられていることは確かです。


5. ABC方式の実践

この本には、自分の説明スタイルの傾向を診断するための簡易的なテストが載っています。私はこのテストを受け、自分が非常に悲観的な性格であることを初めて自覚しました。今から思えば、一つの失敗に対して異常に悲観的な思い込みを抱き、落ち込むことが多かったのです。

本書に出会ってから、何か失敗をするたびにABC方式の訓練を行うことにしました。最初はスマホのメモ帳機能を利用して文字に起こし、慣れてきたら頭の中で行うようにしました。すると、不思議なことに楽観主義的な考え方が徐々に無意識に浸透していったのです。

例えば、私は大学1年の発表で失敗したとき、「やはり自分はダメだ。教師になんて向いてない」と思い込み、激しく落ち込みました。しかし、「いや、そんなことはない。自分は高校を中退していて、慣れてなかったのだから今回はしかたない。それによく考えたら他の人と比べて見劣りするような内容でもなかった」という反論(D)や「少しずつ進歩していけば、すぐにみんなに追いつく、大丈夫」という元気づけ(E)を行ったのです。そうした訓練を続けることで、上に述べたDやEのような説明をすることが当たり前になっていきました。

これが私にとっては最良の薬となりました。今では、失敗をしても落ち込むことがほとんどなくなりました。すごく前向きに人生を楽しむことができています。セリグマンは、上記の方法のほかにも、共同体への貢献を感じるために慈善活動に参加することを勧めていたので、大学時代に12回献血に行きましたが、これもよかったのかもしれません(これは最も手っ取り早くできる社会貢献で、血液検査も同時にやってもらえるのでとてもおススメです)。


6. 結び

『オプティミストはなぜ成功するか』は、中央図書館で借りることができます(http://opac.lib.u-toyama.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BN06871739)。これから冬の休みに入りますが、冬は日照時間が短く、心のバランスを崩しやすい季節でもありますので、お気になられた方はぜひ読んでみてください!

また、私は月曜14:45から16:15まで中央図書館でコンシェルジュを勤めていますので、似たような悩みをもたれている方はぜひお越しください。これから何ができるかを一緒に考えましょう!(*^_^*)