研究テーマの決定の体験談

 こんにちは、さとうです


1週間ほど雨が続いたと思たら、暑い日が続くようになりましたね。


日光で手が痒くなるわ、暑くてしんどいわで、ちょっと...って感じです。



今回は、研究テーマについてお話をしたいと思います。

僕が卒論や修論のテーマを決めた時の過程やその時思っていたことも添えてお伝えできればなと思っています。


1.卒論のテーマ決定

以前ブログにて、僕の専門分野の紹介をさせていただいたときに、たまたま読んだ論文に衝撃を受け、

現在も「金印勅書」をテーマに研究を行っていると話したと思います。

さとうの自己紹介(専門分野) (u-toyamalibs.blogspot.com)


もともと僕は、西洋史の勉強をしたく、大学に入りました。


入学してしばらくは、「ゲルマン人の大移動」や古代ゲルマン人に惹かれ、その勉強をしたいと思っていました。


しかし、学部一年生の時に現在の指導教員の先生にそのことを相談したところ、

古代ゲルマン人の時代の研究はあまりなされていないため、それで卒論を書くのは難しいとのことでした。


その後は、「あ、厳しいんだ」と思いつつ、卒論のことは特に考えずに過ごしていました。


そして、2年生の西洋史の専門の授業で、自分で論文を探し、それについて発表する授業がありました。


その授業のためにいろいろ論文を探していたところ、「金印勅書」について書かれた論文を見つけました。


その論文が次のものです。

横川大輔「神聖ローマ帝国における1400年の国王廃位・新国王選挙と「金印勅書」」『西洋史学』258号、日本西洋史学会、2015年、89-107頁。(CiNii 論文 -  神聖ローマ帝国における1400年の国王廃位・新国王選挙と「金印勅書」)


当時僕の中で思っていた皇帝(国王)と選帝侯の関係がこの論文を読んで崩れ去り、

勅書をうまい具合に使って自分たちに都合のいい国王を選出した選帝侯に興味がわきました。


西洋史の授業では自分で論文を探し発表する授業が毎期1-2個あるのですが、

それ以来、発表は先ほどの横川さんが書かれた論文、神聖ローマ帝国や選帝侯についての論文を発表しました。


そして、4年の卒論題目決定の際には、「金印勅書」の制定と選帝侯の関係について書くことにしました。


もともと、「なぜ、この7人の選帝侯が選帝侯になったのか?」という疑問があったのですが、

選帝侯に関する研究が少なかったため、テーマを「制定の目的」に絞って卒論を完成させました。


ここまでが卒論の話です。



2.修論のテーマ決定

現在僕は、「金印勅書」と世襲の関係について修論を書いています。


「金印勅書」制定以降、皇帝はほとんどカール4世のルクセンブルク家と、

その家系の断絶後はカールの孫娘と結婚したアルブレヒト2世のハプスブルク家から輩出されていました。


その後、帝位はほとんどハプスブルク家が世襲的に受け継ぐ形となっていますが、これは特別法的に明記されていたわけではありません。


例えば、現在のイギリス王室は法律によって王位の継承の条件や継承順が決められています。

また、スウェーデン王位継承に関しましても、法律で現国王の嫡出子の条件が規定されています。


しかし、それらの法律もイギリスは1701年に、スウェーデンは1810年にそれぞれ制定されており、どちらの近世以降の法律となります。


中世以前、このような法的根拠がないのに1つの家系から皇帝が輩出されていることを

中世後期という時代、ドイツという地域に絞って、「金印勅書」から明らかにできることはないかと研究をしています。


この世襲についての疑問は、卒論のためにある文献の一部を読んでいるときに生じました。


それは、「金印勅書」で規定されている、国王選挙における選帝侯の投票順に関する記述でした。


その文献では、

「…金印勅書は、明らかにルクセンブルク朝を安定化するという副次的目的を追求しているわけである。」ミッタイス・リーベッヒ著/世良晃志郎『ドイツ法制史概説』改訂版、創文社、1971年、353頁。

と書かれており、金印勅書と世襲についての考察がなされていました。


これを読み、詳細が気になったのですがこれ以上のことは書いておらず、それに関するほかの研究もなく、いろいろ自分で考えました。

が、結局わからずじまい...


しかし、これをきっかけに「金印勅書」と世襲の関係に関心を持つようになりました。


1月の院試のために提出した志望書では、この文献を読む前だったので「選帝侯」についての研究をしたいと書いていました。


その後、世襲に関する疑問が生じたため、院生になってからはそれについて研究しています。




学部生時代に読んだ論文をきっかけに今のテーマに関心を持ち、卒論を進めていくうちに新たな疑問が生まれ、修論のテーマになっています。


ゼミの1つ下の後輩には伝えたのですが、卒論のテーマは自分がやりたいことはもちろんですが、先行研究がないとできないため、先行研究があるもの、多いものをお勧めします。



以上が僕の研究テーマ決定の話です。