線形性のありがたさ

こんにちは、学生コンシェルジュ火曜担当のMORIです。


数学の問題を対処するにあたって「線形性」を念頭に置けば考えやすくなることがあります。

そのため今回の記事では線形性を用いて、問題をどんな流れで解いていくか示していきたいと思います。


まずタイトルにある線形性とはどういうことか?

写像fが線形性があることの定義は次の(ⅰ)(ⅱ)をみたすことである

$f:A→B,x,y∈A,c∈C$ $A,B$は実数、複素数またはベクトルの集合、$C$は複素数集合

※本来は$C$は環上の加群の元と定義すべきではあるが、わかりやすいように複素数の集合とした。

(i)$f(x+y)=f(x)+f(y)$

(ii)$f(cx)=cf(x)$


では、この線形性を扱った問題として不等式、近似の計算があります。


例 $a,b,c>0, a+b+c=1$をみたすとき\[ \sqrt{\frac{a}{1-a}}+ \sqrt{\frac{b}{1-b}}+ \sqrt{\frac{c}{1-c}}>2\]を示せ

pr.)まず、$a,b,c$のうち一つでも$1$より大きいならば、$a+b+c>1$となるため、$0<a,b,c<1$となる。(※$a,b,c≠1$)

(方針として、$\sqrt{\frac{x}{1-x}}>h(x)$となる$h(x)$が線形性の性質を持ち、$h(1)=2$となるような$h(x)$を具体的に見つけられれば、$h(a)+h(b)+h(c)=h(a+b+c)=h(1)=2$として評価できる。今回の場合は$h(x)=2x$となる。)

$ g(x) = \sqrt{\frac{x}{1-x}},h(x)=2x ,\quad x \in \left(0,1\right) $とするとき、

$g(x)≧h(x)$を示す。$g(x)≧h(x)≧0$のとき、\[g(x)-h(x)≧0\iff(1-x)\{{g(x)}^2-{h(x)}^2\}≧0\]から、\[(1-x)\{{g(x)}^2-{h(x)}^2\}≧0\]を示せばよい。\[(1-x)\{{g(x)}^2-{h(x)}^2\}=x-(1-x)(4x^2)=4x^3-4x^2+x=x(2x-1)^2≧0\]※等号成立条件は$x=\frac{1}{2}$ 
よって\[g(x)≧h(x)\]であり、\[ \sqrt{\frac{a}{1-a}}+ \sqrt{\frac{b}{1-b}}+ \sqrt{\frac{c}{1-c}}=g(a)+g(b)+g(c)≧h(a)+h(b)+h(c)=2(a+b+c)=2\]等号は\[a=b=c=\frac{1}{2}のときだが、a+b+c=1に反する\]
よって、
この場合、$h(x)$は線形性を持つことで簡単な形で比較できた。このようにして、線形性をもつ関数で評価しやすいことがあるので、もし不等式評価の条件で使えそうならぜひ試してみてください