【 $\varepsilon$-$\delta$ 論法って何? #01 】~私の研究・興味のある分野について④ ~
水曜日 16:00-17:30
今回は, 自己紹介の欄にも書いた, 私の研究・興味のある分野についての続きを話したいと思います。前回までは主に「病的函数」というものについての紹介をしました。
今回はからは, タイトルにも書いた「$\varepsilon$ - $\delta$ 論法」について簡単に説明していこうと思います。
$\varepsilon$-$\delta$ 論法とは, 極限の厳密な定義で用いられる方法です。「極限」は高校の数学Ⅱで初めて出てくる概念かと思います。数列・函数の極限を数学Ⅲでも学びます。簡単の為, 以下では数列の極限のみを考えることにします。 高校では, 数列の極限を次のように学びます:
実際に, 数列 $a_{n}=\frac{1}{n},\ n\in \mathbb{N}$ を例に考えてみましょう。$n=1,2,3,4,\cdots,k,\cdots$ に対して, $a_{n}$ は, \[ 1,\ \frac{1}{2},\ \frac{1}{3}, \ \frac{1}{4}, \ \cdots, \ \frac{1}{k},\ \cdots \] となります。$n\in \mathbb{N}$ と限りなく大きくなると $\frac{1}{n}$ は限りなく $0$ に近づくことが直観的に分かります。他にも, $\frac{2}{n},\frac{n}{n+1}$ など, 大学入試でも様々な数列の極限を考えたと思います。
しかし,この極限の定義を習ったときにある疑問を抱いた人もいるかと思います。それは, 「限りなく近づく」という表現です。「限りなく」とは具体的にどの程度近づければ良いのでしょうか? $n=100$ なのか $n=100000$ なのか $n=10^{68}$ くらいなのか…? 実際に, この限りなく大きい $n$ を $a_{n}$ に代入すると, \[ \frac{1}{100},\ \frac{1}{100000}, \ \frac{1}{10^{68}} \] となります。確かに, $\frac{1}{10^{68}}$ は非常に小さい正数であり, 限りなく $0$ に近いですが, 決して $0$ ではありません。更に $n$ を大きくすれば $a_{n}$ は $0$ にどんどん近くづくことは分かりますが, 永久に $0$ にはなりそうにありません。 では, 「限りなく近づく」とは一体何なんでしょうか?
そのフワっとした定性的なものを解決するために登場するのが,「$\varepsilon$ - $\delta$ 論法」による極限の定義です。まず, 最初にその定義を見てみましょう:
これが極限の定義です。
(注 : 今は数列の極限を考えているので, 正確に言うと $\varepsilon-N$ ですが, この場合も含めて$\varepsilon-\delta$ 論法と呼ぶことにします。)
数理系の学科の皆さんは, 1年生の初めに微分積分学等の授業でこれを習うと思います。そして, この定義が出てきた瞬間に訳が分からなくなり, 以降 $\varepsilon-\delta$ 論法についての理解が停止したままになる人が少なからずいると思います。 実際に私もそうなりました。私は学部1年生の4月にこれを習い, $\varepsilon,N_{\varepsilon},n$ と記号がとにかく沢山出てきて何が何を意味しているのか全く分からない状態に陥った記憶があります。
では,なぜ極限の定義をこれにすれば先程の問題に説明がつくのか? 次回からは具体的な数列を通してより詳しく極限の定義(*)を説明していきます。
数理系,特に数学科の学部生でこの「$\varepsilon$ - $\delta$ 論法」について, 分からない事を解消したい・相談したいという方がいれば, ぜひブースにお越しください。 お待ちしております!